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僕「大事なものは目蓋の裏」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆.IsLampwR. :2011/09/28(水) 02:00:38.95 ID:axtTgyEU0
・初投稿なのでよろしくお願いします。

・ハリポタとかダレンシャンみたいな
子供向けファンタジーを意識して書きました。

・ある曲が元になっていますが、
文才がないのでそれのイメージを損なう恐れがあります。

それでも>>1が楽しく書ければいいんじゃね?
という寛大な心で読んでもらえたら嬉しいです。
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2 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:02:15.80 ID:axtTgyEU0
暗い。

目を閉じていると、面倒なあれこれを忘れていって心地がいい。

いつしか目を閉じているのか、
開いているのか分からなくなった。


……自分が何者なのか分からなくなった。


暗いところから、少しずつ明るいところへ行く。

青い空間へ出た。
辺りは白くかすんでて、少し肌寒い。
横を雲が通り過ぎたとき、ここは空なんだと気づいた。

ゆっくりと降りながら地面を探し、
茶色い土の上に着地した。
3 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:16:08.61 ID:axtTgyEU0
足を乗せた土の辺りから、緑の芝が拡がっていく。

白い花が小さな蕾を開き、
樹木がサッと枝を伸ばして影を落とした。

暖かい光を注ぐ太陽へ顔を向けると、
目の前を大きなお城が構えていた。

今できたけど、
昔からあるレンガのお城。
4 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:28:59.14 ID:axtTgyEU0
ガラス窓の向こうからこちらを見ている女の子が居た。

城の中心に建つ塔の一番てっぺん。
窓にはまった格子の間から、悲しそうな顔が見える。

ぼんやり見ていると、
その唇がゆっくりと動いた。


(た、す、け、て)


と。

その言葉がわかった瞬間、
僕の体にズドンと何かがと落ちてきた




あの娘を助けなくちゃ!

僕の体に落ちてきたのは、使命だ。


気が付けば、
服装が騎士のようになっていた。

右手には鏡のように光る銀の剣。

左手にはドラゴンが彫られた盾。

背中にはバラの花のような色のマント。


僕は正面の扉へ向かってかけ出した。
5 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:36:02.15 ID:axtTgyEU0
誰か居る。
敵だ!

僕に気付いた鎧の兵士たちが斧や剣を持って襲いかかってくる。
ガシャガシャとうるさい。

硬い鎧を相手にするには、この剣では通らなそうだ。

手前の一人が斧を振り上げる。
振り下ろされる軌道をしっかりと見て、
身をかわしつつ空いた横腹を突いた。

ガンッ
やはり硬い。

一人一人を相手にするのはキツそうだ。
あの娘を助け出して、この城から逃げてしまおう。

振り下ろされる武器を剣で払い飛ばし、
盾で受けつつ隙間をすり抜けていく。

先を急ぐ。
6 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:40:25.60 ID:axtTgyEU0
あの娘が居る塔の階段を探し、
一歩一歩に勢いをつけてかけ上がる。

ひたすら上へ登っていった。

束になって階段を塞いでいる鎧の頭を
踏んで飛び越える時、その拍子に頭が外れた。
振り返りざまに見える空っぽの中身。

人が入っていない?

驚いたが、
今はそんなことを気にしている場合じゃない。
早くしないと全てが台無しになってしまう気がしたからだ。


なぜだろう?
僕はとても焦っている。
7 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:43:44.85 ID:axtTgyEU0
見つけた!
きっとこの部屋だ。

下からガシャガシャと階段を登ってくる音がする。
この扉を開けたらすぐ、あの娘に逃げるように伝えよう。

弾んだ息を一度吐き出し、
吸い込んでからドアノブを乱暴に引いた。

バン
「早く――」

早く逃げよう、と言い始める前に音が消えた。
さっきまでの鎧が走る音がしない。

暖炉の前に立つ彼女は、振り向いて言った。
「いらっしゃい、大地。」
8 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:47:00.28 ID:axtTgyEU0
暖炉の上に乗った白いケトルの口から湯気が立っている。
ちょうどお湯を沸かしていたらしい。

格子窓から差し込む光のカーテンに
立ち上る湯気が白く重なる。
明かりのついていない部屋は、日光のみを照明にしていた。

まるで下階の慌ただしさとは無縁な光景に、
僕はつい安心してしまう。
でも
今の状況を考えると、そうもしていられない。

「早く逃げよう、鎧が来るよ!」

「大丈夫。彼らはもう追ってこないから。」

そう言いながら彼女は、
バケツの中の杓子で炉に水をかける。

ジューっと音を立てながら火が消えた。

9 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:52:22.12 ID:axtTgyEU0
もしかしたらこの娘は、この城に
閉じ込められいる訳ではないんだろうか?

彼女の身なりをよく見る。
金色の巻き髪が肩の辺りまでさらさらと伸びていて、
瞳はあざやかな青。

白くてヒラヒラした服は
胸にドラゴンの紋章が刺繍してあり、
頭には細かい宝石で飾られた小さな冠を乗せている。

何よりこの落ち着きよう。
10 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:54:06.55 ID:axtTgyEU0
いろいろ質問をしたいけど、
こんな人を前にすると呼び名に困る。

「あの…姫様は…」

僕が口ごもっていると、彼女は口に手を当ててクスクスと笑った。

「私はあなたを名前で呼んだのに、『姫様』だなんて……。」

さっき僕を『大地』と呼んだように、
名前で呼べってことか。

「でも、初めて会ったのに名前なんて知ってるはずないよ。」

「そうなの? 私はあなたを知っているけど。」


一方的に知ってる訳じゃ無さそうだし、
忘れたままでいるのも悪いよなぁ。

「……今は忘れてしまっているのね。
大丈夫、いつかは必ず思い出せるから。」

「うん…ごめんね。」

気が長い人みたいで助かった。
11 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 02:59:26.07 ID:axtTgyEU0
彼女は食器棚からカップを2つ取り出すと、
小さなキッチンに並べて置いた。

「ここまで来るのは疲れたでしょう。
紅茶にする? コーヒーにする?」

キッチンの棚にはお茶の缶や、
キャンディが入ったボトルなどが並んでいる。

この部屋はお茶を飲んでくつろぐ場所らしい。

「紅茶がいいな。」

僕は部屋の真ん中にあるテーブルの椅子に座った。
12 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:29:38.58 ID:axtTgyEU0
「なんだか、安心したよ。
君が閉じ込められてるんじゃないかって思ってたから。」

そう言って、真ん中の皿からクッキーを一つつまんだ。
意外と甘味が濃くて、ストレートの紅茶によく合う。

「ごめんなさい。
早く来て欲しかったから、あんなこと言っちゃった。」

顔を赤くして目を逸らした。
可愛いな…。

じゃあ、あの『何かが落ちてきた感じ』は何だったんだろう。

「ところで、名前を思い出したらの話なのだけど……。」

青い瞳がしっかりと僕をとらえる。

「一つ、お願いを聞いてほしいの。」

見ていると安心して、
心をどこか遠くへ解き放てるような
不思議な瞳。

そうか、これの名前を僕が知らないはずがない。

「ダイチ、どうしたの?」

いつも見ることが出来るからこそ、忘れてたんだ。

「ソラ……。」
13 :短いし全部投下しちゃうか…… ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:37:21.22 ID:axtTgyEU0
「そう、私はソラ。あなたはダイチ。」

「僕たち相性のいい名前だね。」

まるで、こうして会うために決められたような名前だな。

「これも『使命』なのかな……。」

「私を助け出すことはさっき消えてしまったけど、
『使命』は自分で選ぶこともできるわ。」

「君の願いを聞くことも?」

ソラの表情に影が差す。

「このお願いは…… 断られるのが怖いのだけど。」

窓の外から見たのと同じ表情。
テーブルに置かれた手が、きゅっと不安げに握られる。

「どうか、私を愛してください。」
14 :短いし全部投下しちゃうか…… ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:39:46.09 ID:axtTgyEU0
そのお願いを素直に嬉しいと思ったのと同時に、
別の考えが頭を巡った。

愛してほしいという願いは、
好意の他にも意味がある気がする。

孤独。

開いている窓から庭を見下ろすと、人ひとり居ない。
さっきの鎧たちも空っぽだった。

どこまでも広い空間に……一人ぼっち。

それが怖いと言うなら、迷うことなんてないだろう。
僕はソラの手を両手でしっかりと握った。

「もちろん!約束しましょう。」

「本当に?」

「うん、君の瞳に誓うよ。」

と言って、後から恥ずかしくなる。

「あー、ちょっとキザだったかな。」

「ううん、嬉しい!」

にっこりと微笑んだ。
僕も嬉しくなって 「サクッ」

しまった、クッキーの皿にひじを乗せていた。

「慌てん坊さん。」
15 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:44:47.79 ID:axtTgyEU0
それからソラはお城の中の案内を始めた。

ソラは足が速い。
僕の手を引いて全速力で走るので、
転ばないようにするのがやっとだ。
やっと離してもらえたと思ったら、今度は僕が追いつく前に逃げていく。

案内が追いかけっこに変わる。

やっとのことで行き止まりの壁に追いつめると、
なんと壁の一部を外してしまった。

外した壁の向こうは、地下へ向かう真っ暗な階段のようだ。

「来て。すごいものを見せてあげる。」
16 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:48:36.89 ID:axtTgyEU0
明かりのない階段を足元に気をつけながら降りると、
ただっ広い部屋へ出た。

天井に明かりをとるための丸い穴が空いていて、
中央で寝息を立てる巨大な生き物を照らしている。

近づくにつれて、見覚えのある赤黒い姿が見えてきた。

ドラゴンだ。
ソラの服の刺繍や、
僕の盾に掘られていたものにそっくりな。

「これは……?」

「お城を守ってるの。
鎧たちの手に負えないことがあったら、起こして助けてもらうのよ。」


鱗と分厚い皮膚に覆われた堅そうな頭。
それをソラがなでると、ザラザラと音がした。

ピクリとも動かない。僕がなでても同じ。
ただすやすや眠っているだけだった。
17 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:54:33.64 ID:axtTgyEU0
次に案内されたのは書斎。

試しに一冊開いてみると、
どこの国か分からない文字が書かれていて読めなかった。

垂らしたインクをストローで吹き飛ばしたような文字だ。

「それは詩集ね。」

その本の中の一つを読んでもらった。
背筋を伸ばし、少し気取った声で音読する。

すると、
バン!と本から火花が出て隣の本棚を焦がしてしまった。

「間違えたわ。これは魔法の呪文だったみたい。」

ソラは少し魔法が使えるらしい。
18 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:57:30.19 ID:axtTgyEU0
部屋をほとんど周った頃には僕らは疲れきっていたので、
大人しくテラスのテーブルでトランプをしている。

「ねえ、私達ずーっと一緒よね?」

「そうだよ。」

また嬉しくなることを言うなあ。

「ソラは寂しがりやなんだね。」

「だって……。」

「ああ…、分かってるよ。ごめんね。」

僕は最後のカードを出した。

「やったあ!ようやく勝てたよ。」

ふと空を見渡すと、もう陽が暮れかけていた。

この時間になったら家に帰らないと、
誰かが僕を叱るんだった気がする。
19 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:58:30.56 ID:axtTgyEU0
「そろそろ――

帰るよ。と言おうとすると、ソラが途中で口を挟んだ。

「そろそろ夕飯にしましょ!
そうだ、寝室の案内がまだだったわよね。」

泊まらせる気だ。
まずいぞ。

「困るよ。僕はもう帰らないと。」

「なんで!? ずーっと一緒じゃないの?」

しばらく一人にするのはかわいそうだけど、
しょうがない。

「また遊びに来るから。ね?」

ここに来る道を思い出さなきゃ。



そもそも、ここはどこだ?
20 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 03:59:47.00 ID:axtTgyEU0


見たこともない場所へ、どうやって来た?

ここに来るまで何かに乗ってきた?

ちゃんと道を通って来たのか?


僕は何者だ?


「やめて! 思い出してはだめ!」
21 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:00:44.17 ID:axtTgyEU0
ソラが何か言っている。
僕は両肩を揺さぶられ、やっと我にかえった。
ぼやけた目の焦点を彼女に合わせ、言う。

「これ、夢だよね?」

傾いた陽はソラの頭の後ろまで降りて来ていて 、
顔の部分を影にしている。

「……気づいちゃったの?」

夕焼けが真っ赤に、真っ赤に変わっていく。

「そう……なら、」

真っ暗な顔の瞳だけが、渦巻く灰色を映す。
ゴゴン、ゴロゴロと地響きのような重たい音がする。

「仕方がない。」

ピカッと強い光が放たれた。
22 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:07:48.97 ID:axtTgyEU0
僕はいつの間にか庭に立っていた。
城へ乗り込む時の、あの武装だ。

空は暗い雲に覆われ、冷たい風が吹く。
開きっ放しの城門がキイキイと揺れる。
分厚い雲の中で雷がくすぶっている。

ソラはテラスから、色を失った目でこちらを見ていた。

その時中庭の方から、
「ウオオオオオオオオオォォォォ!!」
暴風に乗って、恐ろしい叫び声が聞こえてきた。

中庭の下にはあいつが眠っている。

羽をふるって飛んできたのはドラゴンだ。
地下室で見たときに丸まっていたそれは
体を曇り空に広げ、
ぐわっと開いた口から炎を吹き上げた。

ドラゴンは僕を見つけると、
「逃がさんぞ、小僧ォォ!」

炎をかみくだくような声でしゃべった。

あの時触った赤黒い肌の感触は、
鎧なんかよりもっと堅そうだった。
正直勝てるとは思えない。
僕は剣を構えた。
23 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:08:47.23 ID:axtTgyEU0
ドラゴンは一度高く飛んだ後、体をたたんで急降下してきた。

来るぞ!

タイミングを見計らって右側へ避ける。
が、それを追いかけるようにのばされた後ろ脚に蹴られ、
叩き飛ばされた。

そのまま塀にぶつかり、体が嫌な音を立てる。

剣ははずみでどこかへ弾き飛ばされてしまったようだ。
24 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:18:56.94 ID:axtTgyEU0
軋む体をなんとか立ち上がらせると、ドラゴンはもう目の前に降りてきていた。
太く鋭い爪のついた前脚で塀に叩きつけるように、押し込まれる。

体の痛みと、この体格差。
脚をどけることなど出来ない。
首が圧迫され始める。

頭がくらくらし、視界が暗くなってくる。
これまでか……。

熱い息が顔にかかる。
「あっけないものだな。」
とドラゴンはせせら笑った。

「小僧、
最期に言いたいことはあるか?」

気管がせまくてうまく声が出ないが、
それでもまっすぐ目を見て言ってやった。

「愛してるよ、ソラ。」
25 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:20:46.79 ID:axtTgyEU0
軋む体をなんとか立ち上がらせると、ドラゴンはもう目の前に降りてきていた。
太く鋭い爪のついた前脚で塀に叩きつけるように、押し込まれる。

体の痛みと、この体格差。
脚をどけることなど出来ない。
首が圧迫され始める。

頭がくらくらし、視界が暗くなってくる。
これまでか……。

熱い息が顔にかかる。
「あっけないものだな。」
とドラゴンはせせら笑った。

「小僧、
最期に言いたいことはあるか?」

気管がせまくてうまく声が出ないが、
それでもまっすぐ目を見て言ってやった。

「愛してるよ、ソラ。」
26 :眠気が人を多重投稿させるのか? ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:42:24.97 ID:axtTgyEU0
「……なに?」

首にかかる力が弱まる。
喉にすっと空気が通る。

「だって、君の瞳に約束したから。」

ドラゴンは青い瞳を見開いて、そのまま
砂のような煙のようなものになって消えた。

後には僕の首をつかんだままのソラだけが残った。

「はは…やっぱりこれ、恥ずかしいな。」

ソラは僕の首を絞めていた右手を
呆然と見ると、

「あ゛ああああ!!」

そのまま泣き崩れてしまった。

「泣かないで、ソラ。」

僕はひざまずいてソラを抱き寄せる。
子供をあやすように、ポンポンと髪をなでた。
27 :眠気が人を多重投稿させるのか? ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:43:33.12 ID:axtTgyEU0
しばらくそうしていたかったけど、
ふいに世界が白みがかってきた。
もう夢の終わりが近いんだ。

カメラのフラッシュみたいに、全部消えてしまうんだろう。
ソラはようやく泣き止んで、顔を上げた。

「夢が終われば、私も消えます。
それがせめてもの罪滅ぼし――

「だめだ!!君を置いてなんて行けない!」

彼女の右手をぎゅっと握って走り出す。

「ダイチ? どこへ……」

「夢の外だよ!」

「私は夢よ、外へは出られない!」

そんなの分かってる。
でも、でも……!

世界は白くなっていく。
もうどこを走っているのか分からない。

いつしか走っているのか、
止まっているのか分からなくなった。
28 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:45:50.91 ID:axtTgyEU0


「ありがとう。私も、愛しています。」


フラッシュの中で、一言が響いた。
29 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 04:47:57.05 ID:axtTgyEU0


       *       *       *


ゆったりと目を開き、体を起こす。
背伸びして、空気を胸いっぱい吸い込む。

朝は空気がひんやりとしていて、全てを否定するように爽やかだ。

まだ眠気で揺れる意識の中に、少しの絶望が残っていた。

カーテン勢いよく両手で開く。
そこに見えるものは……。


どこまでも広がる、青空。

なんだ、
連れ出したりしなくったって、ちゃんとそこに居たんじゃないか。

僕は満足げに微笑んだ。

「ずーっと一緒だよ、ソラ。」



(END)
30 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/28(水) 05:07:58.21 ID:axtTgyEU0
初めはこんなもんか

もうこんな時間…。
見ていた人が居たらおやすみなさい。

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/28(水) 06:04:06.32 ID:RySr1/kx0
一応見てるよ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/28(水) 06:48:24.59 ID:OrE7b1kAO
ミテマスヨー?〈●〉〈●〉

ファンタジーってか児童文学か。ここでは珍しいな。この手の話はオチが難しいもんだがこれからどうなるか?続き期待。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/28(水) 14:57:14.65 ID:NuBtr7jG0
>>1
お疲れ様
短いけどENDって事はオムニバス形式のスレか後日談的な続きあり?
まさか30レスしかないのに総合に投下せずスレ立てたなんて無いよね?

後、文才がないと思うなら書くなその台詞は楽しんで見た人を貶す台詞
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/28(水) 18:13:13.58 ID:rkQf/kjQo
>>33
まあ初投稿でオリジナル物なんだから「文才ない」とか予防線張りたくなるのは人情だろ、そう目くじら立てるなよ。

ちなみに>>1よ、流石にこれで終わりじゃないよな?続きあるんだろ?

もし終わりなら……
■ HTML化依頼スレッド Part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310647825/
に報告してくれよ?
35 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/29(木) 02:23:47.94 ID:W14u6kTv0
やたー見てる人居たヽ(*´∀`)ノ

>>32

これで終わりです。
短すぎたか……orz
期待させてごめん

>>33

短い話は総合に投下すれば良かったのか…
板の説明読んだだけでフライングしちゃったごめん

>>34

どうも!了解です。



それじゃあ
これからたまに投稿していくんでまた会えたらよろしく!
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/29(木) 03:10:42.02 ID:HfH9bvGKo
おーい
HTML化依頼スレに張り付けたURLが間違ってるぞぉー

乙乙……
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/29(木) 22:33:17.21 ID:hHibuR+no
すごく聞いたことあるフレーズ
なんだっけ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/29(木) 23:57:21.63 ID:m4FaoNDIo
ルパンじゃね?
39 : ◆.IsLampwR. [sage]:2011/09/30(金) 01:33:14.82 ID:PkCXFqQM0
うわぁあああああ URL訂正してくれた人あざっす!

>>37-38
スレタイはKOKIAの曲ですよ
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